REPORTピックアップレポート

【南砺市】福光荒木で「ねつおくるばーい」

2025.07.25

となみ野で七夕のお祭りといえば、福光の七夕を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
それとは別に、荒木地区で行われる『ねつおくり』は地域色豊か。古くから続く、深い歴史ある神事です。
今回は『ねつおくり』の意味や、実際何をするのか、などについて『ねつおくり』を支えている方々にお話を伺いました。


荒木自治会 会長   今井聡さん
      副会長  西頭純一さん

 
7月21日、福光・荒木地区に伝わる『ねつおくり』が今年も開催されました。

ねつおくりは稲の穂が出て花が咲き、病害虫の発生しやすい「土用三番」に行われる稲作の無事と方策を祈る行事です。

祭りの起源は江戸時代に遡ります。農民の悩みの種は、夏になると発生する病害虫「こぬか虫」でした。今のように農薬もない時代、病害虫は防ぎようがなく、神様に祈念するか人の手で駆除するしか方法がありませんでした。当時、加賀藩内では外注よけの神事は広く行われていたようですが、神事を行うには奉公所に申し出が必要でした。

貞享4年(1687年)の夏は天候不良からおびただしい数のこぬか虫が発生したといいます。困り果てた農民は悲願を込めて奉公所に申し出、加賀の殿様の許しを得て、翌元禄元年(1688年)にねつおくりが始まったとされます。
 

福光宇佐八幡宮で五穀豊穣祈願祭
『ねつおくり祭り』は、大人から子どもまで荒木地区の住民全員が参加する地域ぐるみの行事です。祭りでは田んぼの面を笹で払い、太鼓を打ち鳴らして「ねつおくるばーい、ねつおくるばーい」と声を合わせて囃しながら練り歩きます。
 
「ねつおくるばい」という掛け声の意味は、はっきりとは分かっていませんが、「熱を送る(=払う)」という言葉から、熱=病気や虫を追い払うという考え方からきているのではないかと言われています。

祭り当日は早朝から準備が始まります。まずは笹竹の採取からスタート。その後、『ジジ・ババ』という藁人形と、それらを乗せる舟『荒木丸』を笹竹で製作します。藁人形のジジ・ババは日本神話のイザナギとイザナミの神を象徴しているともいわれており、ジジには刀、ババには髪飾りを付け、墨で顔を描きます。笹には子どもたちがそれぞれ願い事を書いた短冊を飾ります。これで準備は完了です。

ジジ・ババ


荒木丸
準備が整うと福光宇佐八幡宮に参拝し、御幣を受け取る『五穀豊穣祈願祭』を経て、村廻りが行われます。ジジ・ババを乗せた荒木丸を担ぎ、太鼓をリアカーに乗せて、子どもたちの「ねつおくるばーい」という元気な囃し声とともに地域の田んぼを巡ります。
 
祭りの最後には小矢部川に架かる福吉橋の上から荒木丸とジジ・ババを投げ入れます。この儀式には「災厄を川に流す」という意味が込められています。その後、人形は回収され、左義長でお焚き上げをします。

近年は猛暑や感染症への配慮から、熱中症警戒アラートが出た際には巡航ルートを変更し、看護師が同行するなど地域全体で安全対策に努めながら行事を守っています。

ねつおくりは観光的なものというよりは地域の人々のつながりを守り、先人たちの祈りがこもった大切な行事です。全国にも「ねつおくり」と呼ばれる行事はいくつか残っていますが、昔ながらの形をほとんど変えずに継承しているのはここ荒木地区だけといいます。このかけがえのない文化を、これからも変わらず大切に受け継いでいきたいと思っています。
 

この記事を書いた人

おとなり編集部

この記事を読んだ人はこんな記事を見ています