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【砺波市】伝統を未来へ 庄川挽物木地の挑戦

2026.06.25

庄川地域で育まれてきた伝統工芸『庄川挽物木地』は、豊富な木材と熟練の職人技が生み出す美しい木目が特徴の器です。

庄川挽物木地というと、お盆や器をイメージされる方が多いかもしれませんが、近年はこけしやお雛様、ボールペンなどさまざまな製品が生産されています。 今回は、現代の暮らしに寄り添い、新たな挑戦を続ける職人さんの情熱や想いをお届けします。


庄川木工挽物会 会長 但田一彦さん  


庄川挽物木地は、富山県内に6つある国指定伝統的工芸品のひとつです。約150年前、山奥から切り出した重い丸太を庄川に流して運搬し、豊富な木材を求めてこの地に職人が集まったのが発展の始まりです。

私たちは全国の漆器産地へ、漆を塗る前の「木地」を供給する裏方の役割を担っています。最終的な商品には私たちの産地名がつかないため、一般消費者の目に触れる機会が少なく、知名度が上がりにくいという課題がありました。さらに、安価で大量生産が可能なプラスチック製品の台頭によって需要が激減し、本当に苦しい時代もあったようです。

「それでもこの素晴らしい伝統を絶やしてはいけない」と、10年ほど前から地元の小学校で体験教室を始めました。木を削る作業は危険を伴うため、子どもたちには木地のお皿に絵付けをしてもらい、私たちが透明なウレタン塗装を施して、食器として使えるようにしてから返却します。持ち帰って日常的に使ってもらい、ご家族の皆さんにも「庄川で作られた伝統工芸品」だと知ってもらえると嬉しいですね。以前、体験に参加した小学生が高校生になり、総合学習の一環としてインタビューを受ける機会がありました。その際に「今でも妹と一緒にあのお皿を家で使っています」と言ってくれたときは活動の意義を強く実感し、職人として大変感動しました。
最近は現代の暮らしにも馴染むよう、木目を活かした白っぽい透明なウレタン塗装の商品を増やしています。長く使っていただくためのお手入れのコツですが、食洗機や電子レンジの使用はNGです。お椀などは一般的な中性洗剤とスポンジで洗って問題ありません。一方、お盆など直接口をつけないものは水洗いせず、乾いたタオルや手ぬぐいで磨くのがコツです。磨けば磨くほど深みやツヤが出て、経年変化を楽しめますよ。
 

わたなべ木工芸 渡辺博之さん


挽物は木工という大きなジャンルの中のひとつです。「伝統ろくろ」という機械に木を固定してぐるぐると回転させ、そこに刃物を当ててお盆やお皿、お椀といった丸い器を削り出していくのが「庄川挽物木地」の特徴です。

木を切ってから製品になるまでの道のりは大変長く、まずは木を板状にして自然乾燥させます。そこから大まかな円状に切り出し、再び乾燥させるのです。木の狂い(反りや歪み)を防ぐため、ひとつの木地を作る準備だけで合計5〜6年もかかります。私たちは何年も先の需要を見据えながら、材料の仕入れをしています。

いざ削る工程に入れば、そこからは真剣勝負です。ろくろに木材を固定して外側を削り出し、内側は専用の嵌め型を使いながら、再びろくろに固定して削っていきます。削りすぎないように自分で叩いて(鍛練して)作った刃物と、長年の感覚だけを頼りに微調整を行なっています。

現在は器作りだけでなく、木のボールペンやシャープペンシルなどの「木軸ペン」の制作にも力を入れています。

時代の変化とともに漆器の需要が減る中で、新しい世代にも伝統技術に触れてもらうために作り始めました。木を削る職人のことを「木地師」と呼ぶのですが、この言葉や文化を未来へ残したくて「木地師が作る木軸ペン」というコンセプトで発信をしています。

良質な厳選木材を使用した一点物
わたなべ木工芸のYouTubeチャンネルでは、挽物木地や木軸ペンの制作工程も紹介しているので、ぜひご覧ください。

長い年月をかけて仕込み、心を込めて削り出した木の器やペンを、皆さんの毎日の暮らしの中で長く愛していただけたら、職人としてこれほど嬉しいことはありません。
 
 

この記事を書いた人

おとなり編集部